運動中起こす心臓発作
「運動中に心臓発作を起こして、心臓マッサージで助かった」そのような報道を耳にしたことはないでしょうか。しばしば、循環器医として運動中に心臓発作を起こして搬送されてきた患者様の担当になることがありました。主な疾患は心筋梗塞と心筋梗塞以外の不整脈などです1。
運動中の心筋梗塞
心筋梗塞とは心臓に酸素を供給する為に動脈血が流れている3本の血管にコレステロールが溜まって、最終的に血の塊ができて突然詰まる病気です。日常生活で歩いたり、重いものをもったりしたときに胸が締め付けられたり、痛くなったり、首や顎に痛みが放散したりする症状が特徴的です。軽い運動で予兆がでれば良いのですが、残念ながら、予兆が全く無く、運動中に突然発症し、最悪の場合には心停止に至ります。
しかしながら、40代のトライアスロン選手が試合前のハードな練習では全く予兆がなく、スイム、サイクリングまではこなした後、最期のジョグで心停止し、心筋梗塞をおこし、搬送されてきたことがあります 2。症例報告しています。
運動中の心事故を防ぐ為に
運動前に検査をして事前にわかる疾患もあります。しかし、疾患頻度がひくいため、大規模研究でアスリートを検査して運動中の心事故の発生率を下げる科学的エビデンスは確立していません。だからといって、運動をいままでしたことがない生活習慣病患者様が運動を初めるのに、何も検査しないで運動するのはどうでしょうか。特に糖尿病患者さんは狭心症があっても症状がでないことがあります。また、運動をしている方でも心筋症といって心臓の形がかくれている人がいます。是非、運動を初める、また、続けている方も一度、検査を考えてもよいとは思います。
また、運動をする場所や環境大事だと思われます。突然倒れた人に対応できる人(BLS-provider)や、AED、救急隊(EMS)への連絡できる体制、そういった環境も重要と思われます。
まとめ
運動のときに胸の痛みがでるなどの症状がある場合や、心筋症、不整脈などは検査で予めリスクが高いかどうか検査できる場合があります。
運動は生活習慣病コントロールに好ましい効果がありますが、安全、あんしん にできるような環境を整えていく必要があります。
参考文献
- Wasfy, M. M., Hutter, A. M., & Weiner, R. B. (2016). Sudden Cardiac Death in Athletes. Methodist DeBakey Cardiovascular Journal, 12(2), 76–80.
- Yamaguchi, S., & Shimabukuro, M. (2022). Acute Myocardial Infarction During the Last Part of a Triathlon: A Case Report. Cureus, 14(12), e32768.
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