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コレステロールの薬は一生飲むんですか?

コレステロールと心血管系のリスク

LDL-Cの高さと動脈硬化性心血管病(ASCVD)のリスクは相関していることが知られています。またLDL-C×時間がASCVDのリスクとなり、さらに、同じLDL-C×時間であれば、若い人のほうがより高いリスクになるという研究があります(1)。


(A) 40歳という基準年齢以降の発症イベント率を、18歳から40歳までの低密度リポタンパクコレステロール(LDL-C)の曲線下面積(AUC)によって階層化したもの。AUCが大きいほど、40歳以降の発症イベントのリスクが高いことが示されています。
(B) 40歳という基準年齢以降の発症イベント率を、18歳から40歳までのLDL-CのAUCと時間的変化(傾き)の両方で階層化したもの。発症イベントのリスクは、年齢に対するLDL-Cの累積曝露(AUCで測定)と、AUCの蓄積の時間的進行(傾き)の両方に依存していることが示されています。

Domanski, M. J et.al. (2020). JACC, 76(13), 1507.

スタチン製剤の効果


コレステロールが高いときは主にスタチン製剤を用います。スタチンは、肝臓でコレステロールを生成する際に必要な酵素「HMG-CoAレダクターゼ」を抑制することで、肝臓が新しいコレステロールを作り出すのを減少させます。これにより、体内で余分なLDLコレステロールが回収され、結果として血中のLDLコレステロール濃度が低下します。LDLコレステロールは動脈硬化を引き起こすため、これを低下させることはASCVDの予防に有効です。

スタチンを中止するとどうなるか

スタチンを中止すると心血管系イベントのリスクが増加することが報告されています(2)。

図1. 一次予防コホートにおける主要な心血管イベントの結果に対する累積発症曲線

図2. 二次予防コホートにおける主要な心血管イベントの結果に対する累積発症曲線

心血管イベントのリスクが高い方のスタチン中断に関しては慎重に考えなければならないと考えられます。つまり「コレステロールの薬を内服したら下がったから、薬をやめる」ということに関しては、既往症など考慮にいれ、スタチン製剤を辞めることで心血管リスクが高くなることを考慮いれなければなりません。

一方で、高齢者に関するスタチンの中断に関する科学的根拠については別に考える必要はあるかもしれません。高齢者のスタチン中止に関するガイドラインの推奨はありません(3)。たくさんの薬を内服している場合、予防効果、QOL(生活の質)などを考えならないでしょう。

若年心筋梗塞の特徴

日本のレジストリーデータをもとにした研究ですが、若年心筋梗塞では脂質異常症の割合が高齢心筋梗塞と比べて多いという報告があります(4)。

年齢層別のリスク因子の有病率

若年層と高齢層のリスク因子のプロファイルの有病率が示されています。全体的な傾向として、若年層は男性患者の割合が高く、高血圧、糖尿病、慢性腎疾患(CKD)といった従来の冠動脈疾患のリスク因子の有病率は低いが、喫煙や脂質異常症の有病率が高いことが示されています。

Ando, H. et.al. (2022). JACC. Asia, 2(5), 574–585.

まとめ

高LDL-Cに対するスタチン製剤のASCVD予防効果はで飲み続けることで発揮されると考えられます。超高齢になりますとリスクベネフィト、コストエッフェクティブネスを慎重に検討する必要がありますが、ASCVD予防という視点からはなるべくは飲み続けたほうがよいでしょう。

参考文献

  1. Domanski, M. J., Tian, X., Wu, C. O., Reis, J. P., Dey, A. K., Gu, Y., Zhao, L., Bae, S., Liu, K., Hasan, A. A., Zimrin, D., Farkouh, M. E., Hong, C. C., Lloyd-Jones, D. M., & Fuster, V. (2020). Time course of LDL cholesterol exposure and cardiovascular disease event risk. Journal of the American College of Cardiology, 76(13), 1507–1516.
  2. Thompson, W., Morin, L., Jarbøl, D. E., Andersen, J. H., Ernst, M. T., Nielsen, J. B., Haastrup, P., Schmidt, M., & Pottegård, A. (2021). Statin discontinuation and cardiovascular events among older people in Denmark. JAMA Network Open, 4(12), e2136802.
  3. Thompson, W., Morin, L., Jarbøl, D. E., Andersen, J. H., Ernst, M. T., Nielsen, J. B., Haastrup, P., Schmidt, M., & Pottegård, A. (2021). Statin discontinuation and cardiovascular events among older people in Denmark. JAMA Network Open, 4(12), e2136802.
  4. Ando, H., Yamaji, K., Kohsaka, S., Ishii, H., Sakakura, K., Goto, R., Nakano, Y., Takashima, H., Ikari, Y., & Amano, T. (2022). Clinical presentation and in-hospital outcomes of acute myocardial infarction in young patients: Japanese nationwide registry. JACC. Asia, 2(5), 574–585.
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この記事を書いた人

沖縄北あんしん内科クリニック院長。専門は虚血性心疾患と心臓リハビリ。小学生時代は肥満児で柔道部に入部をきっかけに、ダイエットに成功した。以来、スキー、水泳、サーフィンなど様々なスポーツにチェレンジしている。自身のダイエットの成功体験を元に、医療のみならず、運動や食事など総合的なライフスタイル提案をするために2023年に自身のクリニックを開業する。

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